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新潟地方裁判所 昭和43年(ワ)402号 判決 1969年5月06日

原告 新潟県信用保証協会

理由

破産財団の性質ならびに破産管財人の法律上の地位に関しては、講学上、種々議論の存するところであるけれども、破産財団は、破産者の破産宣告によつて法律上当然に成立し、破産的清算という目的にささげられた、破産者そのものとは区別されたところの別個の法主体であり、破産管財人はその代表機関であると解するのが相当である。したがつて、破産管財人は破産者の単なる代理人ではなく、また破産者の債務をそのまま継承してこれを履行すべき義務を負うものでもない。されば、不動産に関し、権利取得の原因が破産宣告前にあつても、登記をしない限り、第三者したがつて破産財団に対して対抗することができず(民法一七七条)、また、破産宣告前に生じた登記原因に基ずき破産宣告の後なした登記はこれを以て破産財団に対抗することができないことは破産法五三条の原則上当然であるから、破産管財人は右の如き破産宣告前に生じた登記原因に基ずく登記手続の請求を拒否し得ることは勿論であるのみならず、破産管財人が破産債権者に対抗できない抵当権の存在を容認してその抵当権設定登記手続をなすことは、破産債権者の利益を害するものであるから、管財人の職責に鑑み許されないものというべきである。この理は、仮令、当該不動産につき、土地改良事業施行のため登記簿が閉鎖され、登記をなし得る術がなく、また、破産債権者がこれらの経緯を知悉していたとしても何ら変るところがない。

ところで、原告ら主張の原告協会および原告公庫と訴外株式会社青木印刷所との抵当権設定契約を締結したのは、右訴外会社が破産宣告を受ける以前であつたことは当事者間に争いがないところ、破産宣告前に生じた登記原因に基ずき、破産宣告後破産管財人たる被告に対し抵当権設定登記手続を求め得ないことは前説示のとおりであり、登記がない以上、被告に対し抵当権存在確認をも請求し得ないのであるから、結局、原告らの被告に対する本訴請求はすべて認容するに由なきものというべく、失当としてこれを棄却するの外ない。

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